特殊部隊員という職業がある。
黒を基調としたベレー帽と迷彩服に身を包んだ彼らは日夜、演習場での訓練を欠かさない。
そんな彼らは長い間、ナニワアームズ商藩国の歩兵部隊の戦闘技術の研鑽を影から支え続けた功労者であった。

ロードランナーは敵勢力下で班単独で活動する事が多い為、白兵や射撃等の最低限の戦闘技術の習得は必須である。
そしてロードランナー候補生達がそれらの戦闘技術の習得をする際にも特殊部隊員達の豊富な経験と研鑽が大いに役立つ事となった。

特殊部隊員から出向した教官達はロードランナーの特徴とその任務内容から必要十分な訓練メニューを考案し、これを実践した。

ナイフや銃剣、軍隊格闘術を駆使したCQC(Close Quarters Combat)、拳銃や手榴弾、サブマシンガンを用いた近接格闘、そしてアサルトライフルを用いた射撃戦。
これらの基本戦闘技術に始まり、銃の分解整備から野外でのサバイバル訓練に到るまで単独完結する戦闘単位として機能する為の最低限の技能教育がみっちりと行われた。
それらを受け、ロードランナー候補生達は正にスポンジが水を吸う如く、これらの技術を習得した。
これは各種走力訓練で底上げされた候補生の強靭な足腰や持久力とそれらを合わせて特殊部隊員達によって考案された訓練メニューの相乗効果の顕れであった。

一方で戦術ドクトリンは近代戦闘の基本でもあるファイア&ムーブメントにポイントを絞っての徹底的に教え込んだ。
これはロードランナーの任務が戦闘による敵の撃破では無い事を踏まえて、教える戦術ドクトリンをロードランナーの特徴が活かしやすい1種類に絞り込んだ為である。
ちなみにファイア&ムーブメントとは大雑把に言うと銃火器による射撃で敵部隊の足を止める火力班(ファイア)とその間に相手の側面・後方に回り込んで攻撃を加える突撃班(ムーブメント)に分かれて火力と運動を効果的に連携させる戦術の事である。

 

また教官達は特に火力班・突撃班どちらの場合も地形を有効活用する事を徹底させた。
この方針はロードランナーの主な活動地域が入り組んだ地形になりやすい事、
ロードランナーそのものは機動性を重視する為にどうしても軽装甲になりがちである事から採用された。
火力班として行動する時には地形を活かした効果的な遮蔽の取り方を、
突撃班として行動する時には地形に紛れ、適切なルートを見付けて静かに素早く移動する方法を
重点的に訓練したのである。