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ナニワ作戦会議BBS
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  [No.1055] SSの草稿その2 投稿者:蘭堂 風光  投稿日:2009/11/24(Tue) 02:39:10

SSの草稿その2です。

取り敢えずこれでSSは終了。
しかし全体的に冗長になり過ぎたかなあ・・。

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○虚空に浮かぶ銀槍

どこまでも見渡せる広い空
染める輝くような赤味を帯びたオレンジと
ほの暗い薄青色のコントラスト
その狭間に浮かぶわずかな雲は橙色に燃えあがり、アクセントを添えている。

その澄み渡るような空模様を四角く切り取った窓から眺める見事な口髭を蓄えた初老の男の名をファヒームという。
窓の外に広がるその光景は彼が幼い頃から見続けてきた原風景であった。
この老パイロットは今、次期共和国主力機の最終試験を行う為に政府が調達した民間シャトルに2人の同期生と共に乗り込み、宇宙に上がるときを待っていた。
ファヒームが窓から目を離し、共に試験を受ける相棒達に目を移す。
サングラスをかけて腕組みしながらうたた寝している青年と熱心に教本を読み返している猫耳少女。ともすれば親子か孫かという程の年の差である。
しかしそんな彼らと共に挑む事になった高機動兵器の慣熟訓練を通してファヒームは確かな手応えを感じていた。
(大丈夫だ。俺たちならやれるはずだ。)
心の中でそう呟くと宇宙に飛び立つときを静かに待ち続けた。

/*/

漆黒の闇の中、2本の光のレールがどこまでも何処までも伸びていく。
そしてレールを追うように2筋の流れ星がどこまでも流れ落ちる。

広大な漆黒の闇、その宙域を漂う無数の観測ビットが灯す誘導灯が2本の光のレールとなって虚空に光の立体サーキットを描き上げる。
その光のレールのド真ん中を流れ星のように光の尾が駆け抜ける。
ブースターの噴射光と誘導灯に照らされ、闇の中に時折シャープな流線形を持つジャバニーズの輪郭が浮かび上がる。
そしてその後をピッタリと追走する灰色にも見えるくすんだ白色の機体。
ロングストレートに急カーブ、立体交差に螺旋
巨大な光のサーキットを構成する光のレールはドンドン複雑さを増していき
ターン、インメルマンターン、ヨーにバレルロール
レールを追いかける2筋の流れ星も複雑な光の軌跡を描いていく。
無限大の漆黒の虚空のキャンバスに描かれた広大なはずの光のサーキットは瞬く間に2つの光条によって走破されていく。

そして程なく、文字通り天文学的な行程を駆け抜けて2つの黒と白のI=Dが光のサーキットを完走した。

/*/
コール音が響き、白色のI=Dの中で通話用のウィンドウが開く。
『パーフェクト!10点満点で機動力試験クリアですよ。皆さん、お見事です!!』
興奮気味のオペレーターの声を聞き、ふーと安堵のため息と共に強張った手を操縦桿から引き離すファヒーム。
「まあ俺たちのチームワークに掛れば、チョロイもんですよ。ね、ファヒームさん。」とニヤリと不敵に笑う青年
「こらノブヒデ!調子に乗らないの。まだ試験は残ってるんだからね。」と猫耳をピンと立てる猫耳少女
「まあまあアカネ、少し落ち着いて。とは言え確かに後1つ残っているので気を引き締めていこう。”勝って兜の緒を締めよ”だ、ノブヒデ。」
「へーい。」と少しバツが悪そうに頭を掻く青年ことノブヒデ。
「とは言え、ノブヒデくんの航法オペレートはバッチリだ。残る試験もこの調子で行くとしよう。」
「へへっ。大船に乗ったつもりでドーンと任せて下さいよ、ファヒームさん!」と自分の胸を叩く仕草をするノブヒデ
「もー。」とジト目でノブヒデを見るアカネと苦笑するファヒーム。

『さあ皆さん。ご歓談中ですが、最後の試験内容を再確認しますよ?』とオペレーター
「ああ、すまん。よろしく頼む。」とファヒーム。

キューブ状の立体映像が浮かび上がり、黒い立方体の中に無数の光点が非常される。
『この光点が今回の試験宙域に散布されている観測ビットです。』
『先程のテストではコースを示す誘導灯代わりでしたが、今回はこれらのうち、赤色のランプが点灯しているものが敵機を想定したものになります。』
映像内の光点の大半が赤色に変わり、キューブの中央に近付く程、赤い光点の密度が高くなっていく。
『そして中心部に存在するこの緑色の光点。これが今回のターゲットとなります。』
密集した赤い光点に埋もれるように緑の光点が灯る。
『そして観測ビットに搭載された観測用のレーザー照射装置が放つレーザーを敵機の攻撃と見なします。』
『この”攻撃”を潜り抜けてターゲットを破壊し、安全宙域まで無事退避できれば試験クリアです。』
『以上が試験内容となります。皆さん、準備はよろしいですか?』

「了解だ。」「わかりました。」「りょーかい。」
揃って頷き、同意する3人組。

『それでは3カウント後、テストスタートです。皆さんの健闘を祈ります。』
そう言うと通話ウィンドウが閉じ、代わりに大きく”3”を表示したウィンドウが開く。
「火器管制システム、異常なしです。」とアカネ
くすんだ白色のI=Dのバーニアに火が灯る。
”2”
「空間把握と航法用の各種測定機器オールクリアだぜ。」とノブヒデ。
巨人のカメラアイが瞬く。
”1”
「了解!これより本機は試験を開始する。」と操縦桿を握り締めるファヒーム。
姿勢を整える白き巨人。
”0”と同時に噴射光が辺りの虚空を照らし、白色の流れ星が赤色の光点が生み出す雲海に向けて流れる。

/*/

徐々に近づく赤い雲海。
「遠距離砲撃が可能なレンジに到達しました。」
とアカネが告げると同時に各種観測データからアカネが導き出した複数の砲撃プランがOSを介して各自のコンソールに表示され、共有化される。
「よっと」
ノブヒデが現在の位置情報をピックアップして共有化する。
ファヒームがそれらを参考にして即座に軌道を修正し、砲撃ポイントに機体を移動。

虚空を引き裂いて光条が赤い雲海に突き刺さる。
音も無く無数の光の花が開く。
「誤差修正+2」
続いて再び光条が閃き、より多くの光の花が前方に咲き乱れる。
雲海に生じた間隙のその先に拡大映像が捉えた薄らの緑の光点が見える。

そのままの加速度を維持し、速度を上げ続けなが遠距離砲撃で生じた観測ビット群の間隙に潜り込み、隙間を広げるように前進する。
その前進を止めようと展開されていく観測レーザーの赤い光条が軌道の自由度をドンドン絞り込み、密集地点に追い込もうとする。
瞬く間に前方の虚空が無数の赤い格子で四角く切り取られ、コンマ秒単位で自由度を削ぎ落としていく。
「ファヒームさん!」
コンソールに送られる観測ビットの位置情報。素早く視線を走らせると操縦桿を素早く操作しつつ、トリガーを引き絞るファヒーム。
奥から放たれるレーザー光をバレルロールで纏わりつくように回避しながら周辺の観測ビットに銃撃をばら撒き、ルート選択の自由度を回復させていく。
「流石に激しいな。ノブヒデ、姿勢情報とターゲットとの位置関係の把握を密に頼む。ルート上の障害になるビットだけに絞り込んで叩く。」
「りょーかい。」
アカネとノブヒデからの情報を頼りに効率良く障害となる観測ビットを狙い撃ちながら中央宙域に近づいていく。
漆黒の虚空と其処に浮かんでは光の花と共に消えていく赤い格子。それらを複雑なマニューバで潜り抜ける白い流星。

航空機・宇宙戦闘機に迫る機動性で宇宙を翔ける高機動兵器だが、ファヒームは宇宙でのその特性を航空機よりも寧ろRBに近いと捉えている。
原理こそ違うものの機体の各部に付いた推進装置による柔軟な方向転換による機動力、無重力による立体的な軌道や計器に比重を置いた操縦等の点がそう連想させるのである。
目まぐるしく変わる状況の中、ファヒームはアカネから送られてくる進行ルート上の障害となる観測ビットの位置情報やノブヒデからの機体姿勢や周辺宙域での位置情報等をコンソールで受け取りつつ、必死に機体とその周辺のイメージを補正していく。

中央に近付くにつれて密度を増すレーザー光。徐々に近距離攻撃によるルート確保が厳しくなり、針の穴を通すような操縦が要求されていく。
ターゲットが射撃レンジに到達するまでに掛る予測到達時間は後5分。
激しい爆破による発光が間近で瞬く。
I=Dの装甲が光の加減で銀色に見える。
”4”
進行方向に対する面積を減らすように機体の姿勢を制御する
”3”
絞り込まれる赤い格子。細い細い到達ルートを確保する為に射撃を続ける銃口。
”2”
虚空を彩る無数の光球と赤い光条の乱舞の中に垣間見える緑の光点。
”1”
緑の光点をターゲットサイトに捉える。
”0”
サイトの色が変わると共にトリガーを絞り、銃口が火を噴く。
光条が緑の光点を貫き、光球に変える。
「よし!ターゲット撃破。ここまま一気に脱出するぞ。」
ターゲットであった観測ビットが存在していた事で生じていた死角にそのまま突っ込む。
上昇し続けてきた速度は遂にトップスピードに到達する。
密から疎へ
観測ビットのレーザーが再び包囲網を形作る前に密集地帯を抜けだす。
コクピット内に安堵の空気が流れる。

突然、警告を告げるシグナルが鳴り響く。
「ちっ、あと少しなのに。ファヒームさん、進路上にレーザーが!直撃ルートのド真ん中だ。」
「慌てるな。メインブースターを一旦停止させて、姿勢変更後に再点火する。少々強引な手を使うが2人とも勘弁してくれよ。」
「りょーかい。」「分かりました。」
ブースターを停止させると共にわざと機体の姿勢を崩し重心をずらしながら、補助スラスターを吹かして不整回転を無理やり引き起こす。
急激なGで座席に抑え込まれ、耐Gスーツが悲鳴を上げる。
重力が存在しない中での高速回転で方向を見失わないようにコンソールに表示される機体方向を示すアイコンと自身が把握している機体周辺のイメージを必死にシンクロさせる。
額に浮かんだ汗が球となって宙に舞う。
機体の向きが狙った方向を指した所でブースターを再点火、同時に姿勢制御を回復させて不整回転を大急ぎで止める。
球となった汗がコクピット内の壁面に当たってはじける。
再び急激な加速によるGが機体とパイロット達にかかる。

/*/

少し離れた場所に漂う観測ビットの監視カメラ越しにテスト機の動向を見守っていたオペレーターの目にはそれはあっと言う間の出来事であった。
テスト機が直撃ルートに入ったと同時にブースターが停止し、機体がバランスを崩したかと思うと反転。再点火。
一直線に描かれていた軌跡は鋭角で折れ曲がり、V字を描いて安全宙域に駆け抜けていく。
思わず前のめりになっていたオペレーターは我に返って座席に深く腰を下ろす。
試験が終わり、虚空に散らばっていた光点と赤い観測レーザーが次々と消えていく。観測ビットが役目を終えて、機能を停止させているのである。
漆黒に戻る虚空の中を飛び続ける一筋の流れ星。
暫くすると、そこに眩い光が差し込む。
地球の影に隠れていた太陽が顔を覗かせていた。
太陽光を浴びて浮かび上がる青と白のマーブル模様が映える地球をバックに銀色の輝きを纏う機体と真っ直ぐに伸びるその軌道は銀槍のように見えた。

/*/

○補足?

「最終試験、無事終了したみたいだよ。」と受話器を置きながら守上摂政。
「それは良かった。これで漸くこの機体にも正式名称が付けれるってもんですよ。」と機体を見上げる。
「それで機体名は決まったの?」
「ええ、”ラグドール”にしました。」
「なかなか良い名前だね。これで長かったプロジェクトも終了っと。やれやれ」
カツカツカツ。バターン。
「ああ、守上摂政、ここに居たんですか。」
「あれ?どうしたの乃亜さん。そんなに慌てて」
「開発スタッフの皆さんが次期主力機の開発で得た各種ノウハウの共有化を次期共和国主力機開発プロジェクトの一環として引き続き行いたいと交渉に来てるんですよ。」
「・・・まだまだ続きそうですねえ。」
「そ、そのようね(涙)」

END


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