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  [No.1060] 夕焼けの思い出 投稿者:蘭堂 風光  投稿日:2009/11/28(Sat) 00:04:18

取り敢えず一つ、SSを書いてみました。
なんか砂漠の騎士から脱線している〜とか、気になった点などがありましたら、レスでズバッと指摘をお願いします。

という事で以下はSSの草稿です。

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夕焼けの思い出

ナニワアームズ商藩国の地上部にある飛行場の管制塔の一角にある休憩室。
窓から差し込む夕日を浴びながら一人の老パイロットは外の景色を眺めていた。
何度も洗った為かすっかり色褪せた略帽を被り、年季が入ったイエロージャンパーを羽織った姿はそれがまるで普段着のように彼に馴染んでいた。
この老パイロット、名をファヒーム=ターリックという は今迷っていた。
最近まで自身の人生最後の大仕事のつもりで参加していた国家プロジェクトでの実績が評価され、政府からオファーが掛ったのである。
もっとも政府からのオファーと言っても特に拘束力があるわけでは無く、個人の都合で辞退したところで何ら支障は無い。
(寧ろ、強制力があったら迷う必要も無かったんだがな。)
ファヒームの口から軽くため息が漏れる。
プロジェクトでの活動を通して、燻っていたパイロット魂は再燃したし、自分の故郷の為に尽力するというのも魅力的だ。
しかし長年の古巣である今の職場を離れる踏ん切りがなかなか付けれなかった。
そして思い悩んでいるうちに、知らず知らずに足は古巣に向いていたのである。
すっかり冷めきった黒さと苦さと安さが取り柄のインスタントコーヒーに口を付ける。
(・・・わかりきっているが、やはり何度飲んでもここのコーヒーは不味いな。)
しかし慣れ親しんだ味でもあった。
口に残る苦さに閉口しつつ、夕焼け空を眺めていると不意に昔の、彼が少年だった頃を思い出していた。

彼の父の名はターリック=サーレハと言う。
厳格な性格で人にも厳しかったが、何よりもまず自分自身に厳しい人だった。
常に研鑽を怠らず、寡黙だがその鋭いまなざしは常に先を見据えていた。
パイロットスーツに身を包み、マフラーを纏ってコクピットに乗り込む父の背は子供心に大変逞しく、また何よりも格好良かった。
そんな父の唯一の趣味が映画観賞であった。
ある日、少年だった俺は父に連れられて、映画を見に行った。
今から振り返るとそれは良くある冒険活劇だった。
滅亡の危機に瀕した小国の飛行機乗りの青年が小国を救う様をその青年に憧れる少年の目を通して描かれたものだ。
それでも当時少年だった俺は目を輝かせてその映画を夢中で楽しんだ。
夕日が沈む黄昏時。
映画の余韻に浸りながらの帰路の途中の事だった。
「やっぱり良いなあ。」
思わず父の口からポロリと零れ落ちたその呟きには確かに憧憬が入り混じっていた。
今は亡き父のその言葉が何故か心に残っていた。

ふと気がつくと夕日は沈みきり、航空用腕時計が示す時刻は夕飯時。
紙コップに残っていたコーヒーを一気に飲み干すと休憩室を後にした。

翌日、俺は新しい門戸を叩いていた。


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