以前、聞いたエピソードが面白かったのでそれをヒントにして話を考えてみました。
誤字脱字やこうした方が良いんじゃない?等のアドバイス等がありましたら、レスをお願いしまーす。
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○とある砂漠の騎士のお話
時はナニワアームズ商藩国が隊商として定住の地を求めて世界中の砂漠を渡り歩いていた頃。
赤い砂塵が舞い上がる赤銅色の岩石砂漠と金色の砂砂漠がせめぎ合う境界線に佇む宿場町から話の幕は開かれる。
ゆったりとした旅装をまとった旅人が酒場に訪れると、酒気で鬼のように顔を朱に染めた大男が給仕の少女に絡んでいました。
それを見かねた旅人は毅然とした態度でこう言った。
「やめないか。大の大人が酒の勢いに任せて少女に無理強いとは情けない」
これを聞いた大男は湯気を出さんばかりに憤激し、旅人にそれこそ鬼の如き勢いで殴りかかりました。
されど旅人も黙って殴られはしませんでした。怒りに任せて次々と繰り出される拳をあるいは受け止め、あるいは腕を払い、受け流しました。
息が切れ始めるまで続けた後、これは叶わないと見て取った大男はとうとう思い余って剣の柄を握りました。
それを見た酒場の面々は軽く息をのみ、酒場の空気が静まり返りかえる。
ピンと張り詰めた空気の中、剣を握って気が大きくなった大男が脅し文句を口にしようとした瞬間、被せる様に旅人はこう告げました。
「剣を抜き放つという事は如何に酒に酔っていたとは言え、相手だけで無く自身も切られる立場に身を置くという事。本当に良いのだな?」
高ぶるでもなく、憤るでもなく、当たり前の心構えを静かに語るように、真摯な意志が込められた声が大男の耳朶を打つ。
その声に釣られるように大男が向けた視線の先には旅人の鋭いまなざしがあった。
そのまま両者は動きを止め、対峙し始め、じりじりと静かに弓の弦を引き絞るように時間と共に高まる緊迫感。
高まる緊張と全てが時間を忘れたように静止した店内で遂に動いたのは、旅人の気迫に圧されるように逸らされた大男の視線でした。
大男はすっかり酔いが醒めたかのような蒼白の顔で捨て台詞をはいてスゴスゴと店を退散したのでありました。
ほっとした安堵の息と共に酒場を満たす歓声と感謝の声。
その騒動が収まった後、一杯のお酒を注文し、周辺地域の情報を尋ねた終えた旅人は静かに酒場を後にしたのでした。
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「さあ今日のお話はここまで」柔らかな深みのある声が閑静な図書館でひっそりと漂う。
今日も砂漠の騎士に纏わるお伽噺に聞き入っていた俺は満足げなため息をつく。
「どうだね、参考にはなったかね?」
この小さな図書館で唯一人の小柄な老司書は真っ白で豊かな髭を扱きながら尋ねる。
「ええ、とても参考になりましたよ。いつもありがとうございます」
そう答えて俺はペコリと礼をする。
「なんのなんの。年寄りの昔話で良ければ何時でも聞きに来なさい」
窓から差し込む朝日の中で老司書は朗らかに微笑んだ。
#何となく今日は珍しく筆が進んだなあ。(しみじみ)