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ナニワ作戦会議BBS
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  [No.1774] 設定文+SSの決定稿 投稿者:蘭堂 風光  投稿日:2011/05/29(Sun) 21:38:29

特に問題点も無さそう&誤字脱字チェックもあらかた終了したので、これで一先ず完成です。

/*/−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−/*/
タイトル:ファランクス戦術、その確立への道程

”ファランクス戦術って一点突破の戦術だと思ってたんだけど・・・。”
”密集戦術だな。敵は対抗上、どうしようもなく、密集せざるをえなくなる。さもなければ、迂回するかだ”
”あー。なるほどー・・・”
〜ナニワアームズ王城内での暮里氏をまじえた相談会にて〜


漆黒の”ネット”の中を陽光に照らされ、白銀に輝くラグドールが整然と幾つかの隊列から成る密集陣形を組んでいた。
可変式大口径レーザービーム砲の長い砲身を構えて並ぶ姿はまるで古の戦場で槍を構え、甲冑に身を固めた重装歩兵達を彷彿とさせる。
彼らの視線の先にぼんやりとした霞の様な輝きが浮かぶ。
霞は霧に代わり、やがて雲霞の如く押し寄せる敵となる。
押し寄せる敵を射程に捉えると同時に一糸乱れぬ動きで前列のラグドール達が光条を一斉に放ち、前方から迫っていた無数の敵を次々に撃ち落とす。
正面からの衝突を避け、湾曲するようなルートで前列のラグドールを狙って上下左右から飛び込んでくる敵や飛翔体は密集陣形の後方からの光条の穂先によって貫かれる。
密集陣形を組んだラグドール達が光を遮る白いカーテンの如く、輝く雲霞を押し止める。
業を煮やしたように雲霞が一点に集中すると損害を無視し、無数の光条に貫かれる事にも構わず強引に押し寄せ始めた。
その瞬間、黒と白が反転。
辺り一面の戦場を光が蹂躙し、光の中に幾つかの影の点が生まれる。
光が収まり、再び漆黒が戻ってきた戦場に残っていたのは、ダイアビシニアンの長射程自由電子レーザー砲によって粉砕された敵の残骸と隊列を組んだラグドール達であった。

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以上がナニワアームズの首脳陣が思い描いたI=Dを用いたファランクス戦術の概要であった。

/*/−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−/*/ここで別ページ?

事の起こりは予見されている宇宙での戦いに備えたナニワアームズでの検討会議から始まった。
宇宙での戦いに備えて開発されたラグドールは無事完成したものの、その次のステップ、次の一手をどうするかでナニワ首脳陣は頭を悩ませていた。
上空からの狙撃等の操縦技術の向上、ビームラムやフライトユニット等のオプションパーツの開発、後継機としての重主力機の開発等の様々な案が出されていたが方針を絞り込めずにいたのである。
というのも、サイベリアンを始めとしたI=Dが宇宙戦の主力だった頃から時代は流れ、
空母や駆逐艦、巡洋艦等の輸送以外の役割を担える宇宙戦艦や航路移動が可能な艦載機の出現により今後の宇宙戦がどうなっていくか?というビジョンが掴めていなかった為である。

悩みに悩んだ首脳陣が最終的にとった方法は割とシンプルであった。『分かれなければ詳しい人に聞けば良い』である。
こうして宇宙戦に詳しい暮里氏に相談を持ち掛けたナニワ首脳陣はそこで宇宙戦におけるI=Dの役割のビジョンとファランクス戦術を始めとした戦術について教わった。
これらを元に首脳陣が下した決断はハードウェアによる性能面の進歩とは異なる可能性の模索、つまりファランクス戦術の研究と確立であった。


それから数ヶ月の月日が流れた、太陽が燦々と地上を照らすある日。

ナニワ航空軍における選りすぐりのエースパイロット達で編成された特殊チームによるラグドールの運用データの蓄積
それらを元にした研究班による入念な分析と検討
短期間で密集陣形のフォーメーションをものにしたパイロット達の頑張り

各自がファランクス戦術の確立を目指して行った仕事の成果を見せる模擬戦の日が遂に訪れたのであった。

司令室から演習場を眺める蘭堂の眼下で行われている一糸乱れぬラグドール達の隊列はその成果を如実に表していた。
その様を満足気に眺める蘭堂に司令室を訪れた守上摂政が声をかける。
「仕上がりはどんな感じ?」
「フッ、任せて下さい。バッチリですよ」
「えらく自信満々だね」
「それはもう!あの綺麗な隊列を見て下さいよ」
「なるほど、確かに揃っているね」

そんなやり取りが司令室で交わされている間にファランクス戦術で戦う白チームと従来の方法で戦う赤チームの2つに分かれた各部隊の準備が整い、模擬戦の幕が切って落とされた。
模擬戦の初撃は蘭堂の自信を裏付けるように統制のとれた白チームから放たれた一糸乱れぬ一斉射撃であった。その一撃は赤チームに深々と突き刺さり、一気に15%という損害率を叩きだす。
痛打を被り、浮足立った赤チームは足並みも揃わぬうちに反撃を開始し、ここに模擬戦の趨勢は定まったのであった。

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模擬戦終了後の司令室。
その余りにも圧倒的な結果に気圧される様に異様な静寂が訪れていた。
両手で顔を押さえ、俯いた蘭堂の肩が何かをこらえる様に小刻みに震えていた。

赤チームの損害率は実に45%
対する白チームの損害率は何と85%
……記録的な惨敗であった。

両手で顔を隠し、ションボリと嗚咽をこらえる蘭堂と
かける言葉が思い付かずに気不味げに黙りこむ司令室の面々
微かに聞こえる「うっうっうっ」というくぐもった声以外は司令室は沈黙に閉ざされていた。

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初撃こそは想定通り赤チームに大損害を与えたものの、
初撃を凌いだ赤チームのベテランパイロット達の猛反撃が始まると目まぐるしく変わる戦況に対応が追い付かず突出するもの、
遅れて取り残されるものが出始めた。

こうして生まれた間隙をぬって強襲してくる赤チームに白チームは各個撃破の憂き目に会い、
それにより更に広がった穴を目掛けて怒涛の勢いで雪崩れ込んだ赤チームの勢いに呑まれた白チームの統制はアッと言う間に乱れた。
そこで密集陣形が裏目に出てしまい、各個が思い思いに回避行動を取ろうとして衝突が多発。
逃げ場を失った白チームは為すすべもなく赤チームに蹂躙されたのであった。

ちなみにこの結果にショックを受けた蘭堂は1週間ほど自宅に引き籠ったという。

その後、どうにか立ち直った蘭堂と参謀チームが模擬戦のデータの更なる分析を行い、
出した結論は個人の技量のバラツキとそれに対するフォローや相互サポートの無さであった。
戦況がシンプルな間は取れていた統制も、突発的及び急な状況変化に直面し、瞬発的な判断が必要になってくると技量の差が明確に出てしまったのである。
これによってベテランパイロットほど突出してしまい、逆に新米パイロットは取り残された。
そして本来ならそこでフォローに入るべきベテランパイロット達が個人技に走ってしまい、各個撃破されてしまった訳である。

さらに学校が無く、集団生活を体験する機会が少なかった現役パイロット達がかなりの割合に上る事が分かり、その事がここで思わぬ影を落とす事になったのである。
また過去の事件によって本来なら部隊長となるべき人材の育成が遅れていた事もこの事態に拍車をかけた。
後に行われた調査の結果、小隊単位でリーダーシップを発揮できる人間が全体数に比べてかなり不足していた事が判明した。

こうして明らかになった問題点に対してナニワアームズは対応を迫られる事となった。

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カキーンという打撃音と共にボールが空高く舞い上がる。
新品のグローブを片手にへっぴり腰で空を見上げながらボールを追うパイロット達が派手に衝突し、その横にボールが転々と転がる。
難しいバウンドをしたボールがセカンドの股下をトンネルし、それを見て慌てたライトがボールに追いすがる。そしてその間にランナーはホームに返る。
スコアボードには各回毎に8点、6点、9点といった景気の良い数字が並び、打撃戦の様相である。

陽光が降り注ぐグラウンドでは藩国軍に所属する全パイロット達が小隊単位で班分けされ、現在、合同野球合宿の真っ最中であった。

蘭堂の発案で行われた合同野球合宿は、散歩の途中で通り掛かったリトルスネーク球場で少年達が元気に野球の試合をしているのを見かけた時に着想を得たものであった。
当パイロット達の間では何故野球!?との声も少なく無かったが、こういうのは口で説明するよりも体験してもらうのが一番と宥められて実施される事になった。
ちなみに負けたチームは失点に応じた合宿中の罰当番や居残り特訓(勿論、野球の)が待っているので皆必死である。

こうして開始されたパイロット達による野球合宿であったが、
始めの数日こそブーイングも多かったものの、元々人気の高い種目であった事も幸いしたのか、はたまた罰当番や居残り特訓が余程嫌だったのか、
数週間後にはパイロット達の野球の実力は目に見えて向上していった。

そして合宿最終日。

カキーンと快音が響き渡ると「オーライ、オーライ」と元気の良い声を張り上げたセンターのパイロットが使い込んだグローブを空に掲げて見事にフライをキャッチ。
ショートへの鋭いライナーをノーバウンドでショートがキャッチすると即座にベースカバーに入ったセカンドに送球し、ダブルプレー。
スコアボードにはズラリと0が並び、投手戦の様相である。
グラウンドにはチームメイトへの声援や掛け声が響き渡り、本合宿中でも1,2を競う好ゲームが繰り広げられていた。

そして蘭堂や参謀部の面々は一緒になって試合観戦をし、声援に声を張り上げていた。

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その後、参謀部での戦術プランの練り直しや部隊長候補の育成等が行われ、2度目の模擬戦の日が訪れた。

ベテランパイロットを先鋒に据えた赤チームと密集陣形を組み、思い思いにズラリと武器を構えた白チーム。
再び対峙する赤と白の戦いの火蓋が切って落とされた。
各個に様々な角度から攻め立てる赤チームのベテランパイロット達。
それに対する白チームの動きは以前とは異なり、判で押したような統制は失われていたものの前列と後列の連携が有機的に働き、
新米パイロット達の動きで生じる穴をベテランパイロット達がすかさずフォローし、チーム全体が1個の戦闘単位となって赤チームを迎え撃った。

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第2回模擬戦報告書
赤チーム損害率:35%
白チーム損害率:5%

前回の演習で明らかになった課題であるチームワークと相互連携はかなりの面で改善が見られました。
今後の更なる部隊の練度向上や小隊長機の通信機能増強等により良好な成果が期待できそうです。

#この辺によくできました的な判子で締め


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