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  [No.734] SSの草稿その1 投稿者:蘭堂 風光  投稿日:2009/07/20(Mon) 21:55:39

師弟制をちょっと盛り込んでみました。

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カッと地表を照らす太陽の日差しはジリジリと景気良く膨大な熱量を惜しげもなく降り注ぐ。
「あ、暑い・・。」
余りの暑さと長時間に渡る砂漠の徒歩での巡回による疲労で既に俺の顎は上がりっぱなしである。
砂漠の騎士の見習いの身である俺にはこれは中々ハードである。
腕に巻いてある航空用腕時計のベルト部分が汗で蒸れてじっとりと湿って気持ち悪い。

前方には壮年の男がキビキビと歩を進めている。
銀髪をターバンで包み、ゆったりとした服から垣間見える引き締まった四肢は日に焼けた褐色の肌をしており、余分な脂肪を削ぎ落としたその姿はボクサーやマラソン選手を彷彿とさせる。
その瞳が放つ強い意志の力と長い歳月によって得た豊富な経験に裏打ちされた自信に満ちた鋭い眼差しが前方をしっかりと見据えている。
何を隠そう俺の自慢の師匠である。
それに引き替え、砂まみれの略帽を被り、よれよれのイエロジャンパーの上から砂避けマントを羽織った俺はそろそろ足取りも怪しくなってきた。
ちなみに何でこんな服装かというと衣服に全くといっていいほどお金をかけていなかった俺は元パイロットからの転向組で基礎訓練の日々で衣服を揃える暇が無かった為である。
俺と同期の連中の中には同じような格好している奴が割と多い。
閑話休題。
砂漠の騎士はその過酷な砂漠での職務故、基礎訓練を受けた後も十分な経験を積むまではベテランの先輩に弟子入りして共に行動し、実地で師匠から様々な事を学び、一人前になるのである。
そして俺の師匠は文句なしに一流の砂漠の騎士である。
俺と違って息は殆ど乱れておらず、疲労を感じさせない。とても成人したての俺より20歳以上高齢だとは信じられないタフさだ。
本人いわく、長年に及ぶ日々の弛まぬ鍛錬の賜物らしい。
それは兎も角、疲れた・・。
「し、師匠〜。す、少し休みません?さっきから歩き詰めで俺はもうバテバテです。」
俺のギブアップ宣言を聞いた師匠は振り返ると顔を顰めて口を開いた。
「なんじゃ。もうばてたのか。仕様が無い奴じゃのう。」
「そ、そこを何とか・・。」
「全く・・むっ。」
俺との会話の途中で師匠は急に言葉を切ると辺りに視線を走らせ始める。
「ど、どうしたんですか?師匠。」
「うむ。どうやら”あれ”がやってきそうじゃ。幸か不幸か、どうやらお主の願いは果たされそうじゃぞ。」
「へ!?」
「話はあとじゃ。取り敢えずあそこの岩陰へ全力疾走!」
と言うや否や陸上選手真っ青のスタートダッシュを決める師匠と慌てて後を追う俺。
勢い良く岩陰に滑り込んだ後、暫く息を整えていると視界が突然、黄色一色に覆われる。
「砂嵐じゃ。しっかり岩に体を貼り付かせておくんじゃぞ。」
凄まじい轟音の中、辛うじて師匠の声が俺の耳にも届く。
必死に岩にしがみつき、嵐が過ぎ去るのを待ち続ける。
毎度の事ながら砂漠での異変に対する師匠の観察力には舌を巻く。なんでも長年の経験と幾つかのささやかな兆候を照らし合わせているそうだ。
俺も一人前になるには、同様の観察力と判断が下せるようになる必要があるんだが、一体何時になる事やらイマイチ自信が無い。
以前、師匠にぼやくと「習うより慣れろじゃ」と笑ってたっけ。
ちなみにうちの師匠は少々喋り方が古臭いというか独特な所があったりするが、これは別にベテランの砂漠の騎士が皆こんな喋り方という訳では無い。
腕前は超一流な師匠だがそう言う所が少し玉に瑕っとうわっぷ。畜生、砂塵が口に入りやがった。

そうこう物思いに耽っている内にどうも砂嵐は過ぎ去ったらしい。轟音が何時の間にか消えていた。
「そろそろ大丈夫そうじゃな。そっちはどうじゃ?」と師匠。
「ええ、口の中がジャリジャリする以外は大丈夫です。」と砂混じりの唾を吐き捨て、水筒の水で口を濯ぐ俺。
岩陰から這い出すと辺りの風景は一変していた。
とは言っても慌てたりはしない。砂漠の景色が変わるなんてのは砂嵐に限らず日常茶飯事だからである。
自分達の位置や向いている方角を把握する術はそれこそ骨の髄まで叩き込まれている。
「ふむ。そりゃ結構。休息も十分じゃろ、ペースを速めて本部に戻るぞ。」
「さっきの砂嵐で遭難者が出てるかも知れん。場合によっては捜索に人手が必要になるはずじゃ。」
「えー、そ、そんな〜。」
「つべこべ言うんじゃない。ワシら砂漠の騎士は?」
「砂漠で困っている人々を助ける事がその本分。ですよね、わかってますって。師匠の口癖は耳タコですよ。でも愚痴ぐらいは言わせて下さいよ〜。」
「ばかもん!病は気から、弱音ばっかり吐いとると心までしょぼくれるじゃろうが。ほれ、キビキビいくぞ!!」
「はいはい。了解であります。師匠」
「返事は一回!」
「はい!師匠。」
こうして砂漠の騎士見習いの俺の日常は一人前になれるその日を目指して突き進むのであった。


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